日本の少数民族である、北海道アイヌ。
彼らは、日本列島北部周辺、とりわけ北海道に住んでいる独自の文化を持つ先住民族です。
彼らが「青い目」を持つ可能性について考えてみます!
もくじ
アイヌの人々のルーツと目の色
アイヌの人々の瞳は、ほとんどが「薄茶色〜黒の間」です。
容姿の特徴はいろいろありますが、目の色だけでいえば、今の日本人の目とほとんど変わりません。
北海道のアイヌのルーツ
純血のアイヌ人(というものがそもそも存在するのかは不明ですが)は、日本人(弥生人や縄文人)ではありません。
元々北海道には縄文人(いわゆる倭人)やオホーツク文化を持つ別の民族の2種が住んでいました。
その土地に、1,200年ごろに北(つまり樺太、シベリア方面)からアイヌの元となるツングース系民族がやってきて、アイヌになったと言われています。
それを「侵略」とやや物騒な呼び方をする人もいますが、詳細はわかっていません。
そのまま北海道に住み着いたツングース系民族は、縄文人やオホーツク系の人々との混血も進みました。
とはいえ、
- 縄文人
- オホーツク文化を持つ人々
- ツングース系民族
いずれも、青い目を持つヨーロッパ系の顔ではなく、ちょっと濃いめかもしれませんが現在の日本人の顔つきに近いアジア系の顔です。
焦茶や黒い目で、髪色も黒。
なので、北海道にやってきた当初は「青い目をしたアイヌ」の人々はいなかったんではないかと考えられます。
ちなみにこの時点の樺太周辺には、いま私たちがイメージする白人系の「ロシア人」はいません。ロシアが北海道にやってきたのも、17世紀(江戸時代の中頃)です。
住んだ土地で混血が進むアイヌ
アイヌは、他民族に対して比較的友好的です。
世界には「自分たちの民族以外は人間ではない」ってレベルで排他的な民族も多いですが、アイヌは様々な人種からの混血が非常に多いです。
なので、北海道にやってきてからは縄文人との混血もどんどん進んだと考えられます。
さらに、地理的にもロシアに近いため、ロシア側の少数民族(とくに樺太アイヌ)ともつながりが深いです。
そこから、時代が経ちロシアからヨーロッパ系の血を引くアイヌもやってきたことでしょう。
また、日露戦争前までロシア領だった樺太には、帝政ロシアに弾圧されてヨーロッパから極東へ流刑になったポーランド人がたくさんいたと言われています。
- ヨーロッパ系の血を引くアイヌ
- ポーランド人
- ロシア人
などともどんどん混血が進み、その際に青い目をしたアイヌも出現してきたと考えられます。
冬の間は、まさに『ゴールデンカムイ』の漫画のように「船を使わずに、流氷を辿って足で北海道と樺太の大陸間を移動」することも不可能ではなかったため、
国境問題が深刻になり監視が強化されるまでは北海道にヨーロッパ系の人々(ロシア人、ポーランド人など)や、ヨーロッパ系の先祖と混血した樺太アイヌの人々がやってきていたというのは史実的にあり得そうです。
ただ目の色は青よりも黒の方が遺伝的に優勢なので、当時ヨーロッパ系との混血が盛んだったとしても、黒い目のアイヌの方が圧倒的多数派だったと考えられます。
ちなみに、北海道大学 アイヌ・先住民研究センターの野崎氏によると、
祖父母世代まですべてアイヌ民族である者は5.7%しかおらず、後はどこかで和人の血が入っている
参考:現代アイヌの生活と意識
とのことで、3世代ほど経つだけでも混血が進むスピードが非常に速い(=他の民族に対してオープン)ということがわかります。
隔世遺伝による青い目の出現もある
先祖に青い目の人がいる場合、両親が黒い目の持ち主でもまれに子供が青い目を持って生まれてくることがあります!
あまりにも遠い先祖だと可能性は低いですが、ヒイヒイおじいちゃん、くらいであれば十分あり得ます。
なので、北海道で生まれ育ったアイヌでも真っ青な目をした人、青みがかった薄い目の人も、実際にいたことでしょう。
アイヌの話ではないですが、産婦人科での様々なエピソードを漫画にしている『透明なゆりかご』に出てくる、このエピソードは印象的でした。
あらすじ
ふつうの日本人夫婦の間に、真っ青な目の男の子の赤ちゃんが生まれてくる。夫は「自分たちに青い目の子供が生まれるわけがない」と妻の浮気を疑い責め立てるが、妻はとにかく否定。夫側の家族と話し合いをした際に、実は夫に青い目を持つロシア人の血が入っていたことが判明した。その後年月が過ぎるにつれて男の子の目はいつの間にか青色から黒色へ。今では夫にそっくりな男の子に育った。
…という話です。
このように、先祖に青い目を持つ人がいると、隔世遺伝で青い目になる可能性があります。
ロシア系、ポーランド系の祖先を持つ人が少なくないアイヌのことを考えると、薄い色の目や青い目になる確率は、他の日本人よりだいぶ高くなるでしょう。
さらにいうと、アイヌだけでなく、北海道出身の人や、東北(とくに日本海側)出身の人の中で、先祖にロシア系、ポーランド系がいる人は、少しヨーロッパ系っぽい顔立ちになったり、目の色が薄くなったりすることもあるようです。
「小さい頃だけ青い目」のパターンも
人間は、生まれたばかりの赤ちゃんの時期は色素が薄いため、成長するにつれて濃い(黒い)目に変わっていくということもあり得ます。
欧米系の人の間ではよく知られている事実ですが、
「小さい頃はブロンド&青い目だったけど、成長したら茶髪&ブラウンの目になった」
…という人は実はとても多いです。
アイヌは、目が青いだけで、なんだかシベリアやロシア極東などロシアの少数民族のように見えますね!
青い目のアイヌといえば…『ゴールデンカムイ』アシㇼパ
漫画『ゴールデンカムイ』に登場するヒロイン「アシㇼパ」は、生まれも育ちも北海道です。
しかし、アシㇼパの父親の「ウイルク」は、樺太アイヌの母とポーランド人の父の間に生まれたハーフで、南樺太で育ちました。(ちなみに、「ウイルク」はポーランド語で狼の意味。)
ウイルクはポーランド人の父親から受け継いだ「青い目」を持っており、そのためアシㇼパも父親から受け継いだ「青い瞳」を持っている、という設定でした。
アリシパはポーランド人のクオーター
そこから読み解くと、アシㇼパの血すじは
- 1/4 ポーランド人
- 1/4 樺太アイヌ
- 1/2 北海道アイヌ
という感じになります。
アシリパは「ポーランド人のクオーター」なので、青い目なのも納得ですね。
しかし作中では「青い目のアイヌ」は、とても珍しい存在として描かれています。
ロシア系、ポーランド系との混血が進んでいても、実際にはとても少ないのだと思います。
ちなみにアシリパの年齢は公式には公開されていませんが、すでに13歳だと思われます。(作品にアイヌ語監修として携わった中川裕さんがイベントで話されています。)
すでにこの年齢になると、今後目の色が大きく変わることはないと思いますが、小さい頃はもっと青い薄い色の目だった可能性はありますね!
ゴールデンカムイは最近実写化もされて話題になりましたが、女優の山田杏奈がアシリパ役です。彼女は埼玉出身でアイヌのアイデンティティはないのですが、アシリパの変顔など巧みに再現してくれるので原作ファン的には嬉しかったです!