少年時代のハウルが描かれている(という裏設定になっている)絵本があります。
「裏設定」といっても、都市伝説とかではなく宮崎駿氏自身が「この主人公は幼い頃のハウル」と明言しています。
しかも、その物語には、かつて若く美しかった頃の荒地の魔女も出てくるんです。
もくじ
昔のハウルと荒地の魔女を描いた絵本『星をかった日』とは
昔ハウルと荒地の魔女が描かれている(という裏設定になっている)物語の原作絵本が、こちら。
井上直久さん作の、『星をかった日』です。
※現在とても品薄で新品の購入は困難。中古のみ手に入ります
井上直久さんは、「イバラード」という架空の世界を描く画家さんで、ジブリにゆかりの深い方です。
「イバラード」とは、ジブリ映画『耳をすませば』でも一瞬出てきた架空世界です!
『星をかった日』も、このイバラードを舞台にしたお話です。
『星をかった日』の主人公は、「ノナ」という少年。
彼は、実は幼い頃のハウルだという裏設定になっています!
確かに、ハウルの映画でも登場した「少年期のハウル」とも瓜二つですね。
(同一人物なので当たり前かw)
そして、これを、ジブリ風にアレンジして映像化したのが、
ジブリ美術館でしか見ることのできない短編アニメーション作品『星をかった日』です。
↑『星をかった日』のパンフレット
このパンフレットも、ジブリ美術館でしか手に入らない限定品です。パンフレットといっても、ちゃんと物語の流れがわかる「絵本」的な内容で、読み応えがあります!
わたしも一冊持っているのですが、たまに取り出して眺めては満足してます。笑
ここに出てくるノナ少年の、可愛いのなんのって…。
さすが「ハウルの幼少期」って設定なだけあって、とんでもない美少年です!
さて、この『星をかった日』ですが、
- ジブリバージョン(パンフレット・映像)
- 井上直久さんバージョン
この2種類があり、実は、作られたのはジブリの映像が先です。原作は後からできた、という変わった背景があります。
『星をかった日』の誕生秘話
『星をかった日』は、こんな流れでできました。
- 宮崎駿氏が、井上直久氏のイバラードを「耳をすませば」で採用。
その後も、イバラードを映画にしたいと思い続けていた。 - ジブリ美術館を建てるときに、井上氏がイバラードの壁画を頼まれる
- 壁画を描きながら、井上氏がこれから作ろうとしている絵本(星をかった日)のアイデアを宮崎氏に話す
- 宮崎氏がその物語をとても気に入り、映像を作ろうと決める
(実はこのとき、井上氏は主人公を女の子だと考えていたけど、宮崎氏は男の子だといって譲らなかった) - 映画『ハウルの動く城』完成直後、宮崎氏が絵コンテを内緒で作成
(もちろん主人公は男の子。笑) - 絵コンテを見た井上氏はそれを気に入り、映像が完成
- その後、井上氏が自分の絵で「星をかった日」の絵本を描く
なので、井上氏の『星をかった日』の絵本も、ジブリの『星をかった日』の影響を少しは受けているんだと思われます。
ただ、物語自体は、結構違います。
ジブリ版『星をかった日』の物語
ジブリの『星をかった日』の映像のあらすじは、イバラード世界に住む「ノナ少年」の話。
ノナ少年の住む町は、時間の使い方を見張っている時間局があって、厳しく管理しています。ノナは間に合わない、サッサとできない少年なので、息がつまって家出をします。
誰もいない砂漠を一人で歩いていると、ふしぎな女性ニーニャと出会い、彼女の農園の小屋で暮らし始めました。
ある日、畑にかぶがたくさんできたので売りに行ってみると…
「ノナ」、「ニーニャ」という主要人物が出てきます。
- ノナ=若き日のハウル
- ニーニャ=若き日の荒地の魔女
という裏設定です。
なので、実はこのジブリ版『星をかった日』は、ハウルと荒地の魔女の「出会い」も描いているんですね。
井上さん的には、「荒地の魔女=ニーニャ」という、宮崎氏が勝手に決めた裏設定には驚いたようですが。笑
鈴木さんが言ったという、ニーニャとノナ君が後の荒れ地の魔女とハウルだという説、私は宮崎駿さんから直接聞きました。あの魔女とはあんまりだ、せめてサリマン先生にしてくれと(笑)言ったんですが、イヤそうなんですとゆずられませんでした。
参考:Twitter Naohisa INOUE 井上直久 @iblard_INOUEより
いやあ、それにしても、、「美少年ノナ→ハウル」は納得できるけど…
(目の色が違うのはちょっと気になるけど。笑)
「素敵な女性ニーニャ→荒地の魔女」ってのは全然想像できないですもんね😂
変わりすぎ😂(一体、何があった…!そして目の色違う。笑)
ちなみに、パンフレット『星をかった日』では、井上さんへのインタビューもあり、こんな事実が明かされています。
※このインタビューの時点では、井上さん作の絵本『星をかった日』はまだできていませんでしたが、もちろんこの絵本のアイデアが元になっています。
井上直久氏版『星をかった日』の物語
井上氏の『星をかった日』の絵本のあらすじは、どこかの世界の田舎に住むある子供の話。
秋になり、畑にかぶがたくさんできました。今日は市場の出る日です。畑にできたカブのいいのを選んで積んで、みんな街へと急ぎます。「わたしのカブで買えるかな」 星を売るドワーフ小人にたずねると…。
数えきれない星の中の、ひとつの星のお話です。
実は、井上氏の『星をかった日』には、少年の名前は出てきません。
読者は、少年のことは何も知らされずに物語を読んでいきます。…というか、そもそも少年なのか少女なのかも不明です。とても中性的な見た目の子です。
もともと井上さんは主人公を女の子に、と考えていたのもあって、あえて性別がわからない感じにしたのでしょうか。
そして、「若き日の荒地の魔女」であるニーニャも、こちらの絵本には出てきません。
ただし、ニーニャは井上氏の描く空想世界イバラードには、存在します。
井上氏はイバラードについて、たくさんの著書があるのですが、その中の『イバラード博物誌』に登場しています。
”ニーニャの店
簡単なソルマなら、手品のようにその場で作れます。
この店ではお客の求めに応じて、いろんなソルマを出して見せます。
ソルマはお客の思念に反応して、次から次へと姿を変えます。
私がイバラードで見たもののうち、
何分の一かはこのソルマであったかもしれません。”
「ソルマ」とは、イバラードの世界の魔法のこと。煙や音、光学的映像を利用し、見る人の思い(思念)に反応して、可視化し、変化する虚像です。「煙の静物」とも表現されます。
言い換えると、「はっきりとした幻を見せる魔法」という感じでしょうか。
なので、ニーニャは、イバラードの世界の魔女なのです。
…というわけで、ニーニャは完全ジブリのオリジナルキャラではなく、井上氏のイバラード世界の中の住人なわけです。
『星をかった日』は、子供に読ませたい名作!
ここからは、ジブリと井上さん、両方の「星をかった日」の魅力をお伝えします!
ジブリの『星をかった日』
ジブリの『星をかった日』は、もともとジブリ美術館限定の短編アニメーション作品なので、DVDもなければジブリ美術館で観る機会はありません。
しかも。
ジブリ美術館の短編アニメーション作品は、時期によって変わるので、ちょうど「星をかった日」が上映されているタイミングでジブリ美術館に行かないと、観ることができないんです。
かなりハードル高いですよね😅😅
ここからスケジュールをチェックできます。↓
ただ、この映像作品が見られなくても、この映像を絵本にしたパンフレットは、ジブリ美術館内の図書閲覧室「トライホークス」で販売されていて、いつでも(品切れしていなければ)買うことができます。
こんな感じで、絵本のような感じで読み進めることができます。
そしてさすがジブリ。
絵もとても美しく、合計13ページの物語の中に、30カット描かれています。ジブリ美術館の短編アニメーション作品は10作以上あるのですが、その中でもずば抜けて映像(絵)が美しいです✨
「イバラードの世界をジブリが表現すると、こんなに美しいんだなあ〜〜」と感動します。井上さんのイバラードも最高なのですが、ジブリもまた良き…✨
井上さん自身も、この映像を見て、このように語っています。
「それは僕がこれまでに描いたイバラードの世界、中でもにぎやかな街と菜園のある住まい、それに夜の空とを美しく描いた詩のような映像でした。 」
参考:井上直久『星をかった日』メモより
そして、同じ映画ではありますが、作者(井上さん、宮崎さん)が伝えたいことも少し違ってきます。
「宮崎さんはこの作品はあえてそういうふうに多くを語らず、詩のように作ったと言われます。確かに映画を観ると、描かれていない部分もなんとなく感じ取れるから不思議です。この映画で宮崎さんは、ノナという少年の、思春期の心を借りて、人に与えられた見方ではなく、自分の意識で世界を見はじめた時、世界はこうも変わって見えるのだということを表現したかったのではないでしょうか。」
参考:『星をかった日』パンフレットの原作者(井上さん)インタビューより
映像は、どこか哀しげで、切なく、そしてとにかく静か。
何度でも見たくなる魅力をもっています。
物語を読んでみたい・絵を見たい人は、ぜひパンフレットをゲットしてみてください!!
(ジブリ美術館に行く予定のない方は…たまに楽天のページで販売しています。わたしも行く予定がなかったので、ネットで買いました😅)
井上直久さん作の絵本『星をかった日』
こちらは、井上さんによる絵本の「星をかった日」。
カラフルだけど、どこか懐かしくて、不思議な世界(イバラード)が描かれていて、ページをめくるたびにワクワクするような、とっても素敵な絵本です!!
この絵本の中では、物語は季節とともに進んでいきます。そして、最後は自分の住んでいた「星」から、自分が買って育てた「星」へ移り住むのです。
井上さんは、この絵本の物語についてこんなふうに語っています。
秋から冬、春にかけて、星の成長とともに視点は少しずつ高くなっていきます。そして地平線が丸く見えた後、もといた地上と自分の星は同列に並び、やがてこれまでいた星は遠ざかっていきます。自分が唯一と思っている世界が、実は相対的なものであると知るのは、とても大事な体験のように、僕は思います。
参考:井上直久『星をかった日』メモより
とても夢があるお話で、子供に読み聞かせたら「僕も、自分の星が欲しい!!」となるんだろうな〜って感じます。
ジブリとはまた違い、とても美しい世界観です。
井上直久さんの『星をかった日』は、店頭ではなかなか見つからないけど、ネットで買うことができます。
ただ、結構品切れが多く…欲しい人は、手に入るうちに買っておくのがおすすめです。(今は新品はほとんど手に入らない状態💦)
井上直久作の『星をかった日』と、ジブリの『星をかった日』。
どちらも、宝物にしたくなるような素敵な絵本です!!
そして、井上直久さんのイバラードの作品の中で「伝説」的な立ち位置なのが、イバラードの世界の美しすぎる映像作品、『イバラード時間[DVD/Blu-ray]』。
「イバラード時間」は、井上氏がこれまで描いてきたイバラードの風景画の中から63箇所の風景を本人が厳選し、静止した絵では描ききれない“時間の流れ”を音楽と効果音、CGと2Dアニメーションを加えることにより表現した、まったく新しい30分の映像画集です。
信じられないくらい美しく不思議な世界を、映像で楽しめるのは至福です!!
ジブリが好きな人は、ぜひチェックしてみてください♪
ハウル大好きな人は、こちらの記事もチェック!!
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ジブリのヒロイン考察も色々やってます!