2012年。今から約7年前、「ペニーオークション詐欺事件」が起こりました。
この事件により、小森純やほしのあきをはじめとする芸能人たちによる「ステマ」が急激に有名になりました。
たまたまですが、当時まだ大学生だったわたしは、当時詐欺にかかった数万人の被害者のうちの一人でした。
ついこの間、ふと思い出してペニーオークションについて検索してみたところ、もちろん既にそのサイトは消え去っていました。
今あるのは、「詐欺事件」としてのペニーオークションの記録だけ。
ずっと思い出したくなかった、馬鹿馬鹿ほどに「怪しさしかない」ペニーオークションに引っ掛かった自分の、無知さと哀れさ、そして当時の悔しさを思い出し、その思い出を整理しておこうと思い、この文章を書いています。
わたしがペニーオークション詐欺の被害に合うまで
ウィキペディアによると、この詐欺事件が明るみに出たのは2012年12月。ペニーオークションを運営していた会社役員と社員が逮捕されました。
2012年(平成24年)12月、参加者が入札しても事実上落札できない仕組みのペニーオークションサイト「ワールドオークション」で、入札者から手数料をだまし取ったとして、詐欺罪容疑で出会い系サイト運営会社の役員1人と社員3人の計4人が逮捕された。
わたしが被害にあったのは、ちょうど2012年の11月。事件が明るみに出る「1ヶ月前」でした。
当時、ヤフオクを使っていた
2012年、わたしは当時、ヤフオクを使って身の回りのいらなくなったもの(本など)を販売していました。
当時はメルカリもなかったので、「自分のいらなくなったもの」を高値で手放す手段はあまりなく、ヤフオクが圧倒的に最大手でした。
販売していた、と言っても、大学生なので「お小遣い稼ぎ程度」にやっていたくらいでした。
ある日、自分のパソコンでヤフオクのページを表示させるために「ヤフオク」と検索をかけたところ、検索結果の2番目くらいのところに
「1円スタートのペニーオークションに挑戦してみよう!えっ、OOが45円で手に入った?!」
というような広告が出ていました。今思えば、あれは「ヤフオク」と検索した人に向けたリスティング広告だったんだと思います。
「あれ、ヤフオクにも1円スタートのオークションはあるけど、これはまた違うスタイルのオークションなのかな」
と思い、それでもその時はスルーしていました。
芸能人のアメブロを見ていたら、ペニーオークションが紹介されていた
あまり詳しくは覚えていないのですが、当時は(今でもですが)芸能人がみんなアメブロで記事を書いていました。
それで、わたしもいろんな芸能人の記事を読んでいたんです。
と言っても、毎日熱心に読んでいたわけではなくて、ネットサーフィン中にたまたま辿り着いたから、知っている人の最新記事だけ覗き見してたんです。
そうしたら、ある芸能人が目に飛び込んできました。
(あ、この人、わたしが中学高校の時によくOO媒体で見たけど、まだブログ書いてたんだ。)と思い見てみると、彼女は「わたしはペニーオークションを使って、これをこんなに安く買った!」という記事を書いていました。(名前は伏せます。)
それがあまりにも安かったので、え?!どういうこと?!ってなりました。
そして、「ペニーオークション」とやらについて調べ始めました。
ペニオクについて念入りに下調べした
当時は、わたしはスマホを使っていませんでした。
わたしの周りも、若い子の間でもスマホ率はまだあまり高くなかったような気がします。
「ちゃんと調べよう」
と思い、家のパソコンを開いてペニーオークションについて調べ始めました。
もちろん、めちゃくちゃ怪しいので、めちゃくちゃ念入りに調べました。
- 「ペニーオークション 詐欺」
- 「ペニーオークション 本当」
- 「OO(ペニーオークションの会社名) 詐欺」
など。
単純な検索ですが、下調べとしては役に立ちましy田。
当時、ペニーオークションのサイトは10個くらいあったと思うのですが、結構「ジャンル」として成立するほどのオークションスタイルなのだなという印象でした。
ただし、その多くが「OO(ペニーオークションの会社名) 詐欺」で「詐欺にあいました」系のブログ記事がちょくちょく出てきていました。
その中で、「告発ブログ」が出てこなかった会社が1つだけありました。
「詐欺サイトが多いみたいだけど、ここなら大丈夫だろう。」
と思いました。
決め手は、そのペニーオークションサイト名で検索したら、使ったことのある有名な(もしくは名前くらいは聞いたことのある)芸能人がたくさん出てきたからでした。
ペニーオークションって、芸能人の間で流行っているんだ
その時、「ペニーオークションって、芸能人に流行ってるんだな」と思いました。
ペニーオークションを利用しているアメブロを使った芸能人が何人かヒットし、彼らも実際に商品をゲットしているようでした。
これを完全に信じてしまった自分が、悔しい。
「いくら何でも、問題のある詐欺サイトを紹介する芸能人はいないだろう」と思い、そのペニオクサイトで自分もオークションをスタートすることに決めました。
ここですでに、わたしは詐欺にあったも同然でした。
実際にペニーオークションを使ってみた
ペニーオークションを始めるには、まずサイトの「コイン」を得るために入金する必要がありました。
あのシステムは今考えても謎ですが、まずコンビニや銀行口座から入金→ペニーオークションで使えるコインを購入するという流れだったと思います。
ペニーオークションの仕組み
ペニーオークションは、「1分以内」の勝負です。
自分が入札して、それから1分経てば落札完了です。ですが、もちろん同じ商品を狙ったライバルが出てきます。彼らが入札したら、あなたもまたその1分間の間に入札しなければいけません。
別のライバルに入札されればまた1分追加されるので、永遠に「勝負の1分間」が繰り返される、というわけです。
そして、ペニーオークションは、落札額=入札数です。
もし、入札数が50回だった場合、50円で落札できるんです。
でも、本当に商品が50円で手に入るわけではなくて、一回の入札ごとに自分のコインを消費します。コインは1枚あたり100円なので、一見50円で落札できているようですが、その裏では「50回x100円」つまり5000円がサイトに落とされています。
「一回入札=100円」なのです。
つまり、、「50円で落札できる」ように見えるのは、ただのパフォーマンス(主にペニーオークションを知らない人向けの)であって、実際には最低でも数千円はかかります。
わたしが狙ったのは10万円分のJAL招待券
わたしが狙ったのは、便利な家電やブランド品ではなく、JALの旅行券でした。
わたしは当時とにかく海外旅行に行きたくて、「ペニーオークションで落札すれば、まず間違いなく2万円あれば10万円分の商品券がゲットできる」と踏んだんです。
というのも、ペニーオークションのトップページには、「最近の落札されたものと、落札値段」が表示されて流れてきました。
10万円の旅行券も「落札済み」のところに毎日何十回も出てきていて、そのほとんどが落札額が200〜300円(=入札200〜300回分)だったんです。(もしくは100以下のこともあった)
つまり、もし自分以外にライバルが1人いるくらいであれば、最高でも200〜300回入札すれば絶対勝てる、と思ったんです。(オークションで戦うときは交互に入札するはずなので。)
コインは事前にまとめて購入しておく必要があるので、わたしは、近所のローソンで4万円を入金し、だいたい「400回」ペニーオークションで入札できるようになりました。
勝負を始める。相手が明らかにサクラだと気付くまで
実際に勝負を始めました。
狙うは、JAL旅行券。
何度も入札を繰り返すうちに、ライバルらしき相手は、3人だとわかりました。(アルファベットと数字の羅列のアカウント名なので、わかりやすいようにここではA、B、Cとします。)
20回、
40回、
60回、
80回
と入札回数が増えてきます。
普通だったら(今までトップページで見てきた平均額で言えば)、おそらく100回目あたりで諦め始める人が出てきます。
しかし、A、B、Cは粘っていました。
100回目までは、1分間を待たずにみんながどんどん値段を上げていっていたのですが、120回くらいを過ぎるとみんな1分ギリギリまで粘るようになりました。
みんな自分の入札を無駄遣いしたくない(1回100円なので)し、そろそろ諦め始めるかな、という期待を持って。
しかし、ここで様子がおかしくなってきました。わたし以外の3人(A、B、C)が、交互に入札するようになったのです。
- わたし
- A
- わたし
- B
- わたし
- A
- わたし
- C
- わたし
- B
これだと、「わたし」vs「ABCのチーム」みたいです。
そして、わたしも毎回「5、4、3、2、1」とカウントダウンが始まる落札間際まで踏ん張って待っているのですが、Aが落札しそうでも、BやCは絶対に入札してこないのです。
BやCも、Aの敵のはずなのに、なぜわたししか入札しないんだ…?
そして、A、B、Cがだんだん消えては、D、E、Fといった新入りも参加しだしたのですが、どうしても、絶対にわたしを間に挟む形になるのです。
- わたし
- B
- わたし
- D
- わたし
- C
- わたし
- F
- わたし
- D
つまり、常にわたしさえ諦めれば、誰かが確実に落札する、という状態でした。
ここでやっと、このオークションのライバルたち(A、B、C、D、E、F)は、全員グルのサクラであるという恐ろしい事実がだんだんとわかってきて、愕然としました。
入札ボタンをクリックする手は震え、冷や汗と悔し涙が出てきました。
ちょうど、「わたしの入札回数」が300回を超えた頃(あと100回しか入札できない)、それに気づきました。だって、もう合計の入札回数は650回を超えている。
ここまで「10万円分の旅行券」でペニーオークションの入札回数が伸びたことなんて、一度もなかった。
気付いてからも、もうどうしようも無いうえに「どうにでもなれ」という気持ちもあいまり、入札は続けていました。わたしvsサクラという、絶対に勝ち目のない勝負を。
最終的に、800円台まで上がったころ、わたしが諦めた瞬間にCが落札しました。
わたしはこの完全なる詐欺サイトを虚ろに眺めながら、大学生にとっては大金である「4万円」が、この1時間あまりで消え去ったことに愕然としていました。
敗北、そして詐欺サイトと確信するまで
勝負に敗北し、そのまま自分の甘さ(こんなに安く手に入るはずはないのに、信じてしまったこと)を呪いながらも、「なぜ気付かなかったんだろう」と、ペニーオークションのサイトをくまなく眺めていました。
すると、あることに気付きました。
今さっきわたしが戦ったはずの勝負が、トップページの「過去の落札商品と落札額」に載っていない…。
そこには、終了した時間が「1分前」「10分前」など書かれているのですが、ついさっき終わったはずの勝負は一切表示されないのです。
ここで、これが確実に詐欺サイトであるということを確信しました。
もしわたしの戦った商品が載ってしまったら、通常は200〜300円で手に入れられるはずのものが800円になっている。それはおかしい。今までの値段から考えて、「例外的」な値段だからです。
そして、もしわたしが入金する前にその勝負を「過去の落札商品と落札額」のなかで見つけていたら、おそらく挑戦しなかったと思うのです。ここを見て、200〜300円で絶対に落札できる、と踏んだからこそ、やろうと思ってしまった。
その後、芸能人のブログをもう一度見に行った
そこで、わたしは「それにしても、こんなに誰が考えても詐欺にしか思えないようなサイトを、色々調べたくせにどうして信じてしまったんだろう」と自分自分が不思議になりました。
そして思い当たったのが、やはり芸能人のブログでした。
- 「さすがに、芸能人だったら、詐欺サイトを紹介して自分の信用落とすようなことはしないだろう」
- 「芸能人だからこそ、普通の人よりも自分の発信内容には敏感になるだろうし、酷いことはしないだろう」
なんて、思っていたわたしが甘かったのです。
詐欺だったとわかってから見に行った芸能人のブログに書いてある文書と写真は、当時のわたしの目には本当に薄汚く映りました。
まさか、この人が詐欺師と手を組んでいたなんて、と。
でも、騙されたのは「自己責任」なんだろうし、こんなにわかりやすい詐欺(後から考えれば、ですが)に引っかかってしまった自分自身がとにかく憎いし恥ずかしい。
芸能界ってそんなに薄汚れた場所だったなんて、一般人を騙す仕事もしているんだ、と残念な気持ちでいっぱいでした。
ペニーオークション詐欺事件が発覚。芸能人は吊るし上げ状態に
その1ヶ月後、「ペニーオークション詐欺事件」が発覚し、芸能人は吊るし上げにあっていました。
わたしが見たブログの芸能人も、かなりたくさんの人に責められ、ブログもアクセスできない状態になりました。
それまでは、
「この芸能人はのうのうと詐欺サイトを宣伝して、ブログを見に来てくれる自分の大切なファンを自分の金のだしにして、本当に気持ちが悪い」
と思っていたのですが、
事件発覚後、ネット上やニュースでも数カ月にわたってひどく罵倒され、その後芸能界でもあまり見なくなった人もいることを考えると、彼らは結局ペニーオークションの宣伝で得られる利益を相当に上回るバチが当たったのかなあと思います。
わたしだけでなく、他にも数百人、数千人の被害者がいたことだろうと思いますし、いろんな意味で「ファンを騙した」わけですし。
それに、彼らのウィキペディアにも事件のことは書いてあります。
特に、メディアに公開された8人は、今でも芸歴の中の「黒歴史」として残っていると思います。
- 小森純
- ほしのあき
- ピースの綾部祐二
- 永井大
- 菜々緒
- 熊田曜子
- 松金ようこ
- 東原亜希
特に、「実際に買った」とブログで言っていた7人(菜々緒以外)については、やっぱり複雑な気持ちです。
「ファンに詐欺商品を(ちゃんと調べたり考えたりもせず)紹介した」
という、「考えなしの芸能人なんだな」「また同じことがあると嫌だし、ファンにはなりらないな」と思ってしまうのです。(もちろん、彼らが深く反省しているだろうことはわかっていても)
今、当時を振り返って思うこと
もちろん、当時被害をうけた直後はわたしも「芸能界は汚い」と極端な意見になってしまったのですが、全ての芸能人がそうではないということはわかっています。
それでも、良識ある人は芸能人であろうとなかろうと、自分のお金のために怪しいサイトを紹介したりしようとはしないだろう、ということは、今でも思います。
「ステマ」について
この一件で、「ステマ」という言葉が一般に広く知れ渡りました。
現在も「ステマ」は行われていますし、芸能人にはそういう話がゴロゴロ転がってくるんだろうな、と思います。
今は、、
彼らも、実際は詐欺グループに「使われた」方だよね、という気持ちもあります。
ただ、やっぱり大きな影響力があるからこそ、それを自覚して、そして何よりも自分のファンを大事にしてほしいと思いました。
ブログを見てくれるファンを、本当に家族のように大事に思っていたら、お金がもらえるからと言って無責任に色々紹介するだろうか、とか。この「ペニーオークション詐欺事件」のように、ファンを裏切るようなことに繋がらなければいいなと思います。
芸能人をどうこういうより、わたしも深く反省した
また、わたし自身も、この一件の後は、深く反省しました。
幸いにも被害にあったのは少額(当時のわたしにとっては退勤だけど、詐欺被害額としてはまし)だったので、芸能人をどうこう言うよりも、自分自身の学び(と反省)として、用心深く生きていこうと思っています。
そして何よりも悪いのは、この詐欺サイトを作った人。彼らが捕まっても、そう言う人はきっと結構いるんです。
「世の中にどうしようもないほど悪い人は結構いる」
そう思っておくだけで、こんな風に騙されたりすることもないのかなあ、と。
あとは、自分自身も「うまい儲け話」や「簡単に得する」系には慎重になって、「なぜ安くなるのか」をしっかり論理的に理解しようと勤めようと思いました。
(まあ、その後も人並みにいろいろな詐欺や迷惑メールなどの魔の手が押し寄せるわけですが…。現代はこういうものたちと戦いながら生きなきゃいけないんですかね。^^;)